指導論

【甲子園優勝】履正社高校野球部の岡田監督の指導方法について「教えすぎない教え」

投稿日:2019年8月23日 更新日:

先日の夏の甲子園決勝で星稜高校を破って見事に夏の甲子園初優勝を果たした履正社高校。その岡田監督の著書を読んだので、感じたことを書いていきたいと思います。


教えすぎない教え

「教えすぎ」は選手の自主性を奪う

指導者であれば、「自分のチームを強くしたい」と思って当然である。だが、チームを強くするために、すぐ効き目の表れる特効薬など存在しない。指導者に必要なのは「選手が気づくまでじっと待つ」という姿勢だ。時間はかかるが、この忍耐力こそがチームを強くするのだ。

過去に大阪桐蔭高校と履正社高校の違い、みたいな特集を見たことがあります。大阪桐蔭高校は寮生活で野球漬けの毎日。履正社高校は寮がなく全員が自宅(下宿)生活で練習時間も3時間と短く、選手の自主性を尊重した野球をしている、というような感じでした。

  当時はネットでは「だから履正社は大阪桐蔭に勝てないんだ」というような意見が多く見られたように思います。履正社高校が何故このようなスタイルを取っているのかは、ヤフー記事やこの書籍を読めば理解することができるでしょう。

さて、本題の【「教えすぎ」は選手の自主性を奪う】というのは、最近本当によく言われていますね。ティーチングではなくコーチングをせよと。ざっくりと分けると

ティーチング:答えを選手に教える

コーチング:答えを選手に考えさせる

 という感じでしょうか。私もコーチング関係の書籍を読み込んで学びましたが、実際の指導にコーチングを取り入れているものの、基本的にはティーチングが指導の大部分を占めます。私にも考えがあっての選択ですが、何が正解かは模索中です。

自主性を尊重するという名の放任

「私は部員の自主性を尊重する指導をしているのです」という指導者はいっぱいいますが、残念ながら「自主性を尊重するという名の放任指導」をされている方が多いように思います。規律もなく野球も好き勝手やっている。指導者はそれを見ているだけ。普段の練習でどのようにアプローチしているかはわかりませんが、試合で見る感じでは「全然指導していないな」というのが大多数のケースが多いです。

我々教員の中でも「生徒の自主性を尊重する指導」ということを簡単に口にしてしまう教員がいますが、私は「強制の後に自主性がある」「ティーチングのあとにコーチングがある」と考えています。

学校教育であれば、学力底辺高校で自主性を伸ばすような指導をしたら授業や学校生活が崩壊してしまいます。そういう学校の生徒は、学習方法もわからず勉強もしていない状態の生徒ばかりです。そういう生徒には「手厚いティーチング」で学習方法を教え、基礎基本を教育していき、3年生になったりある程度成長したところでコーチングに切り替えるべきでしょう。

逆に進学校の生徒は、基礎基本がしっかりとしているので、それを応用発展できるような指導をしてあげる必要があるでしょう。まさに「コーチング」の部分です。

私が野球のチームで感じるのは、技術やチームの基礎基本ができていないのに「自主性」に任してしまい、選手が「勝つ野球」をしていない、ということです。自分の指導するチームも含め、多くのチームは「選手が気づくまで待つ」ということをしてしまうと、そもそもチームが崩壊してしまうのではないかと思います。

履正社高校は「甲子園に出場するため」と意識のすごく高い選手の集まりです。自分で様々なことに気づくことができるでしょうし、指導者が何も言わなくても自分で練習するかもしれません。先ほどの例としては進学校の生徒のような感じですね。

しかし、こういう書籍を読んだり世の流れを感じて、部員の意識が低いチームの指導者が「自主性を伸ばそう」とあまり何も言わなくなってしまうとどうでしょうか。自主性を伸ばそうとして、逆に部員の成長する機会を奪ってはいないでしょうか。

我々は「強制」でもなんでもいいので、ある程度のレベルまで「ティーチング」で部員を鍛え上げ、自分達で考えて野球ができるレベルまで部員を成長させ、そこから「自分達で考えさせる指導」に切り替えることが必要ではないでしょうか。

そももその話ですが、高校野球は教育の一環です。学校の教育活動の中の1つである部活動というものであって、野球部での活動が全てではありません。生徒の自主性を伸ばす指導は、野球部の指導ではなく、他の教育活動でも十分に指導できるはずです。最近は「アクティブラーニング」など、生徒自身で答えを見つけ出させるような指導が主流になっているので、授業やHR活動などで、担任教諭や教科担当教諭、その他様々な学校生活で「自主性」を育てようとしています。なので「野球だけで自主性を育てる」というわけではないのです。

守・破・離の原理原則について

私はこの「守・破・離」の考えかたで指導を考えていて、やはりこの順番で指導をしていかないと上手くいかないと思っています。

守:教えられたことを忠実に守る

破:教えられたことに自分なりのアレンジを加える

離:教えられたことから離れて自分の方法で取り組む

ざっくりとこう考えると、自主性やコーチングは「離」の部分ですね。しかし、「離」の境地に達するには「守⇒破」のプロセスを経る必要があります。我々指導者は部員を指導する際に、この流れをしっかりと考える必要があるでしょう。

能力が低かったり、チーム力が未熟なうちは絶対に「守」の徹底です。それができてこその「自主性」であると私は思っています。

教え過ぎたら選手は育たないのか

私は、今まで選手が少なく能力の低い選手を預かり指導してきました。なので基本的にはティーチングばかり、教えるばかりの指導が大部分でしたが、じゃぁ選手が全然成長しなかったかといえば、そうではないと思います。

逆に「入学した時からは見違えるくらい成長したな」と思えるようにまでなってくれた教え子が多いと思っています。人間的にも、野球の知識もしっかりと高まり、私なりには指導は成功しているように思います。

今回の履正社高校の取り組みは素晴らしいと思いますし、このような考え方も、いずれ私が転勤して指導する選手の質が変われば取り入れるかもしれません。

様々な指導方法があり、我々はそれを積極的に学び、自分の指導方法を変革していき、目の前の生徒にとって一番いい指導をできるようにならないといけません。

常に成長していきたいと思っています。


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